第22回 米国のパリ協定復帰 (Le Monde記事より)
皆様こんにちは、ぱすてーるです。本日もお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、気候変動問題をめぐる「米国のパリ協定復帰」に関する2021/1/21付けLe Monde社説の要約をお届けします。
1)バイデン政権による政策転換の意義
2)前政権の政策の見直しに関する具体例
3)今後の課題
以上3点に分けて要約いたします。
なお、第14回ブログでご紹介したパリのデモに関する記事もそうですが、Le Monde記事のフランス語は本当に簡潔で明快です。いつフランス語検定の問題として出題されてもおかしくない、為になる文章です。
今回の記事も「フランス語学習」に最適の深みのある社説ですが、フランス語原文の全てに対応した和訳や文法解説は、別の機会に譲らせていただければと思います(要約全文の基となるフランス語文は、Le Mondeの2021.1.21記事をご覧ください。)
今回は、要約の和文に加えて、記事原文の中で印象的に引用されているJohn Kerry氏(バラク・オバマ政権で第68代国務長官を務め、今回バイデン大統領により特使に任命)のコメント原文も紹介させていただきます。
1)バイデン政権による政策転換の意義 :
・米国のパリ協定への復帰は大きな政策転換であり、地球にとってGood Newsである。
・しかし、世界はパリ協定採択時の2015年とは大きく変わっており、米国は真価を問われることになる。
・大統領特使に任命されたJohn Kerry(前国務大臣)は、気候変動(異常気象)に対する戦いに関して、「失敗という選択肢は無い」(L’échec, a assuré jeudi M. Kerry, n’est pas une option.)と1/21(木)に断言した。
2)前政権の政策の見直しに関する具体例:
・過去4年間、ドナルド・トランプは、常に気候変動を否定し、他の環境保全に反対する国々も巻き込みながら、環境保護のための活動を根底から覆してきた。
・中国に次ぎ世界第2位の温室効果ガス排出国である米国は、「緑の基金」に対し拠出を約束した何十億ドルもの資金のうち、未だ1/3しか拠出していない。
・米国の政策転換を世界に示すために、バイデン大統領は既に、トランプ前大統領によって生じたほころびを修復する作業を開始している。例えば、就任直後に署名した大統領令によって、以下のような内容を実施している。①Keystone XLパイプラインの建設許可の取り消し。②北極での石油開発のための自然保護地域における払下げ特例の猶予。③環境に対して有害または気候変動との闘いを妨害する可能性がある全てのトランプ政権の政策の検証。
3)今後の課題:
・しかし米国には、最も難しい課題が残っている。多国間主義外交における米国の信頼性は大きく損なわれており、国際舞台において米国は2015年当時とは異なる世界に直面せざるを得ない。
・気候変動の分野には、欧州や中国、南米の数カ国など米国以外の多くの国がリーダーシップを発揮している。
・それゆえ米国は、今年から早速、G7やG20、そしてバイデン氏が大統領就任後最初の100日以内に開催を約束した気候変動に関する地球規模のサミット、そしてCOP26において期待されているのである。
・期待されている多くのことは、以下2点が実際に実施されるかに左右されることになる。①エネルギー(政策)転換の加速化、および ②2兆ドル規模にもおよぶ今後4年間のグリーン推進計画の実行
・バイデン政権は、石油会社等のロビー団体の存在があるにせよ、11月にグラスゴーで開催予定のCOP26会議までに、2030年を目標としたより厳しい気候変動に関する新しい目標を設定することになるだろう。
・John Kerry氏は1/21(木)に、自らの新しい職務における「謙遜と野心」を約束した。温暖化対策における「謙遜と野心」は、John Kerry氏の国と地球全体が必要としているものである。(John Kerry a promis jeudi une « combinaison d’humilité et d’ambition » dans sa nouvelle tâche. Son pays et la planète en auront bien besoin.)
以上、ご参考としていただければ幸いです。バイデン政権の誕生は、世界の気候変動問題への取り組みに対し、想像以上に大きなインパクトを与えそうですね。パリ協定に参加している日本の国民の一人としても、目が離せなさそうです。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。