第46回 映画でフランス語上達

第46回 映画でフランス語上達

  皆様こんにちは、ぱすてーるです。本日もお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 今回は、いよいよと言いますか、フランス映画について触れたいと思います。

 実は、フランス映画の大ファンです!!!詩、小説、哲学、箴言集など「書かれたフランス語」の魅力も相当なものですが、映画を抜きにフランス語学習を語ることはできないと思います。

  なぜなら、実際にフランス語の授業において、複数の「お雇い外国人」ネイティブ先生から映画を見るのを勧められたからです。それがきっかけで、渋谷の映画館「ル・シネマ」を知り、ここで何度映画をみたことでしょう。ただ、映画の場合は、字幕は別として「文字になっていない」ので、どうやってこのブログで取り上げたら良いのか迷っていました。

 でも、良い機会ですから、多くのフランス映画を見てきた経験を踏まえ、「フランス語学習に必須」と思える理由を述べてみたいと思います。フランス語上達の一つのきっかけとしていただければ幸いです。

1)フランス映画を見るメリット ~フランス語に惚れるきっかけになり得る~:

 本ブログでは、フランス語上達の秘訣の一つとして「フランス語に惚れること」を挙げました。フランス映画こそ、その「惚れる」対象そのものです!

 大学入学前は、パスカルに「惚れる」のではなく「すがる」形で惹かれていました。一方、「映画」に関しては、「すがる」のではなく「惚れる」形で惹かれていました。なぜでしょうか。以下、私が考える理由を述べてみます。

 1-1)映画産業に携わる人材の教育機関があること:

1943年設立の国立映画学校 (※1)という教育機関があり、映画の質を保つ伝統があると思われること (映画は1895年にフランスで、リュミエール兄弟によって発明されたと言われています)。私の大好きなパトリス・ルコント監督もこの学校を卒業しています。

 1-2)実際に、ため息の出るほど美しい映像が多いこと:

この点については、「論より証拠」で、具体的な映画名を後ほど2)で紹介させていただきます。美しいだけでなく、撮影時の街並みや、流行のファッションなども理解ができます。これにより、フランスやフランス語への興味・関心が増します。

 1-3)映画音楽についても、伝統を踏まえた一工夫があること:

 「映画音楽」が作曲され作品の中で演奏されることももちろんありますが、必ずしも映画音楽が映画専用に作曲されることが無い場合であっても、クラシックの名曲が演奏されることがあります。例えば、エリック・ロメールの『春のソナタ』におけるベートーヴェンのヴァイオリンソナタ「春」、フランソワ・トリュフォーの『隣の女』におけるシューベルトの即興曲などがその例です。

 ただし、トリュフォーの『春のソナタ』では、映画の冒頭にベートーヴェンの「春」が演奏されますが、映像の大半において「映画音楽」はほとんど無かったと記憶します。その分、映画の登場人物による会話自体が、心地よい「音」として「音楽」の代わりになっていたと記憶します。これは私の勝手な解釈ですが、このように考えていた時点で、既にフランス語に「惚れて」いたのだと思います。

1-4)フランスの文学的な伝統(モラリスト文学)と整合すること。

 映画で扱われる題材は広く、歴史上の人物(ジャンヌダルク、シラノ・ド・ベルジュラック、マリーアントワネットなど)であったり、エンターテイメント(リュック・ベッソンの『Taxi』など)であったりすることも勿論あります。

 でも、何といっても市井の人々の「日々の営み」を、様々な切り口で描くフランス映画が、何といっても魅力的です。テーマとは、煎じ詰めれば、「生きること」「愛すること」「生活すること」「死ぬこと」、つまり文学のテーマとも整合します。

 特にフランスには、16世紀のモンテーニュ以来の「モラリスト」文学の伝統があります。その点も踏まえながら、エリック・ロメールやパトリス・ルコントの映画を鑑賞すると、楽しさは倍増します。

(※注1)映像・映画のプロを育てるために技術・芸術教育を行う国立の機関。卒業後はほぼ映画業界での就職が約束されるせいか、受験者1000人に対して合格者70人、つまり約15倍の倍率だそうです。組織概要については以下のWikipedia記事を参照しました。La Femis ou la FEMIS, également appelée École nationale supérieure des métiers de l’image et du son dans sa forme longue, est un établissement public d’enseignement supérieur français, membre de l’université Paris sciences et lettres (PSL).Elle délivre un enseignement technique et artistique destiné à former des professionnels des métiers de l’audiovisuel et du cinéma. La FEMIS est fondée en 1986 et prend la suite de l’Institut des hautes études cinématographiques (IDHEC) créé en 1943.

2)おすすめのフランス映画:

 フランス語を耳にすると、今でも「ワクワク」するのですが、その理由を考えてみると、もしかしたら映画の影響が大きいかもしれません。というのも、今まで私が耳にしてきたフランス語というのは、①大学の「お雇い」外国人先生(若いお兄ちゃん)の授業 ②フランス旅行で耳にしたフランス語 ③卒業後に仕事で耳にしたアフリカ訛りのフランス語 ④映画で耳にするフランス語、以上の4つしかありません。

 この中から、今でもフランス語を耳にすると「わくわくする」原因を考えてみると、②または④しかありません。このうち②は、学生時代の限られた時間しかありませんでしたので、残るは④しかないのかな、と思います。

 以下、今回は3人の映画作家とその作品を具体的に紹介します。紙面の関係で、各映画作家の詳しい経歴等については、省略させていただきました。

2-1)フランソワ・ロラン・トリュフォー(1932年 – 1984年):

ヌーヴェルヴァーグの代表とされる「やんちゃ坊主」が、「愛の映画作家」に変貌を遂げた姿が、以下の映像により「論より証拠」で分かります。

・大人は判ってくれない Les Quatre cents coups(1959年)

・ピアニストを撃て Tirez sur le pianiste(1960年)

・恋のエチュード Les Deux anglaises et le continent(1971年)

・終電車 Le Dernier métro(1980年)

・隣の女 La Femme d’à côté(1981年)ドパルデュー、ファニーアルダン(シューベルト)

2-2)エリック・ロメール(1920年 ~ 2010年):

 ヌーヴェルヴァーグの後半の映画作家で、トリュフォーとは真逆のインテリです。大学で文学を専攻し、1942年に文学教師の資格を得て、パリのリセ(高校)で教鞭をとっていたそうです(古典文学を教授)。その傍ら映画評論を執筆。おススメの作品は以下の通りです。

・満月の夜 Les Nuits de la pleine lune (1984年)

・緑の光線 Le Rayon vert (1986年)

・友だちの恋人 L’Ami de mon amie (1987年)

・「四季の物語」シリーズ (Les Contes des quatre saisons以下①~④)

①春のソナタ Conte de printemps (1990年)

②冬物語 Conte d’hiver (1992年)

③夏物語 Conte d’été (1996年)

④恋の秋 Conte d’automne (1998年)

・パリのランデブー Les Rendez-vous de Paris (1995年)

なお、『パリのランデブー 』は、パリの若者の恋愛模様を描いた映画ですが、何とロメールが75才の時の作品です。ストーリー展開も楽しく、とても75才の監督の作品とは思えない、みずみずしく美しい映画です。

3)パトリス・ルコント (Patrice Leconte, 1947年11月12日 ~ ): 

 上記1-1)の注1で紹介した国立映画学校で映画監督になる勉強後、最初は漫画家・イラストレーターとして漫画雑誌社で働く。1975年に初の長編映画を製作し、その後はコメディ、ドラマ、ラブストーリー、アクションまで幅広いジャンルの映画を製作。おススメの作品は、以下の通りです。

・髪結いの亭主 Le Mari de la coiffeuse (1990)

・タンゴ Tango (1993)

・イヴォンヌの香り Le Parfum d’Yvonne (1994)

いずれも、「商業的な成功は難しいかな」と思う反面、以下のような独特の特徴があります。「髪結いの亭主」は、日本で最初に公開されたルコント作品で、監督の名を日本に知らしめた作品です。「幼年時代の幻想」と言えるかもしれませんし、エンディングがやや衝撃的ですが、美しい映画です。

 「タンゴ」は、軽妙なフレンチ・ラブコメディ。出演はフィリップ・ノワレ、リシャール・ボーランジェ、キャロル・ブーケ、ジャン・ロシュフォール。こちらも必見です。

 「イヴォンヌの香り」も、耽美的で強く印象に残る美しい映画です。イポリット・ジラルド、サンドラ・マジャーニ、ジャン=ピエール・マリエールの3人が圧倒的な存在感を示しています。主人公イヴォンヌの叔父ロラン(リシャール・ボーランジェ)の存在感もあり、この映画の教訓的な意義を存分に味わうことができると思います。

以上、今回は3人の映画監督につき紹介させていただきました。「映画鑑賞により、フランス語会話への関心が増し、フランス語学習のモチベーションが高まる」ことは間違いありません。今後も別の機会で、他の映画監督の作品も紹介させていただこうと思います。今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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