第27回 ラ・ロシュフコー 箴言集 / 291・300・301・310・316

第27回 ラ・ロシュフコー 箴言集より (箴言番号:291・300・301・310・316)

皆様こんにちは、ぱすてーるです。今回もお読みいただき、ありがとうございます。

 今回は、第9回・第16回ブログに続き、ラ・ロシュフコーの箴言を5つお届けします。

どのページを開いても、簡潔な文章の中に、はっとさせられる内容が盛り沢山です。

 小説でもなく、詩でもなく、短い警句集ですので、フランス語の「実地学習」にも最適

と思います。和訳とフランス語原文の後に、私の若干の注記や個人的な感想も添えさせていただきます。

(291)人の偉大さにも果物と同じように旬がある。

Le mérite des hommes a sa saison aussi bien que les fruits.

(注)mérite:功績、長所、取り得、能力。

➡人の偉大さ(功績)には果物のように賞味期限がある、というのは面白い比喩ですね。

(300)伝染病のように感染する(うつる)狂気がある。

Il y a des folies qui se prennent comme les maladies contagieuses.

(注)se prennent<se prendre~:つかまれる、捕らえられる。ここでは、folie(狂気)に捕らえられる=感染する。maladies contagieuses:伝染病

➡つい先日(2021年1月)、米国大統領信任式の直前に起きた国会議事堂占拠事件のことが頭をよぎります。

(301)「お金」に目もくれない人はかなりいるが、「お金」の与え方を心得ている人はほとんどいない。

Assez de gens méprisent le bien, mais peu savent le donner.

➡正直、この”le bien”の訳が「お金」なのか「善」なのかで迷いました。参照した岩波文庫の翻訳では「お金」でしたが、定冠詞leで「お金と言うもの」というのもしっくりときませんでした。そこで「善」と解釈してみると、意外にしっくりと来ました。

念のためネット検索してみますと、Jean-Marie Andréという方が、2013年にラ・ロシュフコーの箴言の数々をテーマ別に編集した面白いサイトがありました。題して”Les twitts de la Rochefoucauld”(ラ・ロシュフコーのツイート)。この中で、箴言301番は、”Le bien et le mal : il y a des héros en mal comme en bien”(善と悪:英雄にも善人と悪人がいる)というテーマの中で扱われていました。この方のle bienの解釈は「善」である模様です。

➡このブログの趣旨は、翻訳の厳密さを追求したり、誤訳を指摘したりするものではありません。よってここでは一応、「二つの解釈がある」と整理させていただければと思います。

(310)人生には時として、少々狂気にならなければ切り抜けられない事態が起こる。

Il arrive quelquefois des accidents dans la vie, d’où il faut être un peu fou pour se bien tirer.

(注)Se tenir de ~ : ~を切り抜ける、成し遂げる。de~に相当するのが「accidents」(事態)

➡これは、戦争での実戦経験や、数々の政治的駆け引きの中で生きてきた著者ならではの警句だと思います。

(316)弱い人間は誠実になれない。

Les personnes faibles ne peuvent être sincères.

➡文法的には何ら特殊な時制や約束事も無いシンプルな文章です。含蓄深い警句なのですが、sincèresの解釈が簡単そうで難しいですね。文脈が無いので仕方ない面もあります。「誠実」「率直」どちらもプラスイメージの単語ですので、余り拘らないで良いと思います。

以上、5つの警句を紹介させていただきました。箴言(301)でご紹介したJean-Marie Andréという方の”Les twitts de la Rochefoucauld”という視点、つまりラ・ロシュフコーの箴言を、現代の「ツイート」の視点で捉えなおす試みは、非常に面白いですね!

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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