第100回 “辞書いらず”フランス語 /「テーマ別」ラ・ロシュフコー箴言集 「良い態度」

第100回 “辞書いらず”フランス語 /「テーマ別」ラ・ロシュフコー箴言集 「良い態度」

 皆様こんにちは、今回も当ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 今回は「テーマ別」箴言シリーズ「良い方法」の続きをご紹介します。箴言番号は260、256、256、265です。いつものように、各「テーマ」の初回は、分類者であるJean-Marie André氏による「巻頭言」からご紹介します。それでは、お楽しみください。

<引用はじめ>

Les bonnes manières : le bon goût vient plus du jugement que de l’esprit

◎良い態度:良い性向は、エスプリよりも判断力からもたらされる。

(訳注)
・manières :①仕方、やり方 ②流儀 ③(芸術・文学の)手法、様式 ④(複数形で)態度、物腰 ⑤(複数形で)気取り
・goût :①味、風味 ②味覚 ③食欲、意欲 ④(de,pourへの)好み、嗜好、(多く複数形で)好み、性向 ⑤美的センス、趣味、審美眼
・plus A que B:BよりもA
・jugement:①裁判、判決 ②判断、意見、見解 ③判断力、思慮分別

➡冒頭のmanièresもgoûtも共に、比較的ンプルな単語ですが、それぞれ複数の意味があるのでちょっと訳し辛いですね。

 今回の「テーマ」でJean-Marie André氏が取り上げている箴言番号260、256、257、265の内容(礼儀、表情、知性などが主なテーマ)から逆に推測して、巻頭言のbonne manièresを「良い態度」、goûtを「性向」と訳してみました。

 確かに、「知性」を備えていても、「判断力」に欠けるせいで、「礼儀を知らない」「態度が悪い」という人も時々見かけることがありますね。 

(260)La civilité est un désir d’en recevoir et d’être estimé poli.

◎礼儀とは、それを受けたいという欲求と、礼儀正しい人であると評価されたい欲求のことである。

(訳注)
・civilité 礼儀、作法、(複数形で)挨拶、敬意の表明
・désir:enはdésirを指す
・estimé :estimerの過去分詞「評価される」
・poli:①礼儀正しい、丁寧な ②磨かれた、つるつるの (polir「みがく」の過去分詞)

➡その通り!としか言いようがない名言ですね!

(256) Dans toutes les professions, chacun affecte une mine pour paraître ce qu’il veut qu’on le croie. On peut dire que le monde n’est composé que de mines.

◎あらゆる職業において、その職業に携わる人々は、それぞれがその職業に特有の表情を示す。なぜなら、彼ら職業人が、周りの人に「あの人はああいう職業の人だ」と思って欲しいからである。世の中は、表情というものだけから成り立っていると言えるだろう。

(訳注)
・profession(s):職業、同業者、(信仰・信条の)表明・公言
・affecter:①ふりをする、装う ②(形態・様相を)示す ③悲しませる ④(悪く)作用する、害を与える
・ mine: ①顔つき、顔色、(複数形で)表情 ②外観、風貌
・paraître :~のように見える、思われる。ここでは、pour paraître~を「~のようにみえるようにするために」→「なぜなら、~のように見て欲しい
・veut qu’on le croie:croieはcroireの接続法3人称現在形。(直説法3人称現在形はcroit)。主節が願望や禁止を表す時(今回の例ではveut que~)には、接続法が用いられる。
・composé de~:~から構成された➡「de~から成り立っている」と訳しました。

➡どこかで、「生きることは演じること」という表現を聞いたことがありますが、この箴言は同じことを言っているように思います。

(257)La gravité est un mystère du corps inventé pour cacher les défauts de l’esprit.

◎厳粛さは、エスプリ(知性)の欠陥を隠蔽するために発明された、身体の神秘である。

(訳注)
・gravité 厳粛さ、重大(深刻)さ、重力
・corps:①からだ、肉体 ②遺体、死体 ③胴体 ④(建物・作品などの)本体、主要部分
⑤物体 ⑥(ひとまとまりの)集団、スタッフ ⑦(軍の)部隊

➡教養や知性の欠落を隠すために、「重々しい雰囲気」を装うのは慎みたいですね。読書や勉強が必要ですね。

(265)La petitesse d’esprit fait l’opiniâtreté ; et nous croyons plus aisément ce qui est au-delà de ce que nous voyons.

◎エスプリ(知性)の狭量さが頑固さを生む。そして、我々は我々が目にするもの以上のものを容易に信じてしまう。

(訳注)
・petitesse :①小ささ、少なさ、乏しさ ②狭量さ、卑小さ、狭量な言動、卑小な言動
・opiniâtreté :粘り強さ、不屈、執拗さ、根強さ、頑固
・aisément :容易に、苦も無く、楽に
・ au-delà de:~の向こうに、(限度・程度を)超えて

➡エスプリ(知性)が欠落していると、我々は、実際には見てさえいないものを容易に信じてしまう、ということだと思います。日常生活やテレビ報道においても、しばしば「事実に基づかない推定」を事実と勘違いすることから、様々な誤解や行き違いが生じることがあります。今日でも通用する戒めですね。

<引用おわり>

 いかがでしたでしょうか。巻頭言の通り、「知性」偏重ではなく、健全な「判断力」を保ち、社会生活を「良い態度」(bonnes manières)で楽しく送りたいですね。

 本日もお読みいただき、ありがとうございました。

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