第20回 新聞記事でフランス語上達 ~フランスのテレワーク事情~
皆様こんにちは、今回も当ブログをお読みいただき、ありがとうございます。
1)ル・モンド記事 / コロナ危機と最新のテレワーク事情:
今回は、フランスでのテレワークに関するル・モンド記事(2021.1.23)の要約をお知らせします。ポイントは以下3点です。
①公衆衛生上の危機(=コロナ)の影響でテレワークが広まり、今後は以前のような働き方の時代に戻るのは不可能であろう。
(La crise sanitaire a provoqué de tels bouleversements qu’il semble désormais impossible de revenir en arrière.)
②しかしながら、今後のあるべき姿として、テレワークは上からの厳格で画一的な押し付けではなく、社会的な対話に基づき実施される必要がある。
(L’avenir du télétravail doit prioritairement se construire par le dialogue social.La mise en œuvre réussie du télétravail ne reposera pas sur une loi rigide et uniforme.)
③そのためには、国家レベルで、当事者の合意により定義された大方針の下で、地域の諸問題に配慮しながら、各産業や各企業レベルでの合意にこぎつける必要がある。
(Elle se fondera sur les grands repères définis par les partenaires sociaux au niveau national, débouchant autant que possible sur des accords négociés, au niveau des branches et/ou des entreprises, qui tiennent compte des problématiques territoriales.)
「社会的な対話」を重視する姿勢は、色々と面倒なこともきっとあるとは思いますが、立派な姿勢だと思います。
「コロナは大変だ、テレビのニュースでもしきりにテレワークが推奨されているから対応しておこう」という場当たり的な姿勢とは、ちょっと違いますね。
そして、テレワークの推進により不利益を被る人も恐らくいるでしょうから、地域の実情もふまえて議論を重ねていこう、ということなのだと思います。
フランスにおいても、日本と同様に、「公衆衛生上の危機」(=コロナ)がテレワーク推進のきっかけになっているようです。
2)コロナ危機以前のテレワーク事情:
コロナによるconfinement(外出制限)が一般化する前は、企業の僅か8%だけが従業員の25%以上に対してテレワークを認めていたそうです(Avant le confinement, 8 % des entreprises avaient développé le télétravail pour plus de 25 % de leurs salariés.)。
ところが、外出制限により、テレワークを実施する企業の割合は84%にまで増加したそうです(Avec le confinement, elles étaient 84 % !)。実に約10倍ですね。
なお、文法的には、“elles”は女性名詞の複数形ですので、salariés=従業員ではなくentreprises=企業を指していると思われます。
しかし84%というのはすごい数字だと思います。もちろん、政府による外出制限が日本に比べて厳しかった、というようなフランス特有の事情はあったのだと思います。
そうではありましても、企業の規模を問わず84%もの企業がテレワークを実施できるのか、にわかには信じられません。そんな疑問を抱いてネットを調べていましたら、次の二つの記事がありました。
3)テレワークに関する議論の発端(1990年代前半):
一つは、コロナ前の2019年5月17日付けのル・モンド記事(英語版)です。Aurélie Collasという方の記事で、タイトルは”In France, Companies Make The Move To 100% Teleworking”。
この記事によれば、「多くの企業がテレワーク100%を実現している訳ではないが、広がりつつある」(Not many companies have been won over to 100% teleworking, but the model is expanding)とのことです。
また、「テレワーク革命が起きていることに気づき、何百万ユーロもの資金を投じて仮想現実世界に企業を設立している投資家もいる」(Some investors are convinced that the teleworking revolution is happening and spend millions to create companies in virtual reality, with meeting rooms, colleague avatars)とのことです。
もう一つの記事は、既に1995年に設立されていた「フランステレワーク協会」による記事です。この記事によると、1990年代初期に、パソコンの普及を背景にテレワークへの関心が高まり、1994年にティエリー・ブルトンという方(2005年に財務・産業・経済大臣就任)が率いる作業グループが、テレワークに関する報告書を発表していたそうです。この報告書の発表を機に、多くの企業がテレワークを試験導入したそうです。
ところが、「テレワークが大幅な生産性アップとコスト削減につながる」という報告書の内容に触発された企業の大半は、試験導入終了後に本格導入を断念しています。
以上より、フランスではコロナ禍以前から、テレワーク導入に関する議論や下地がある程度進んでいたことが推定されます。この辺りの事情も、日本の事情と比較しながら調べてみる価値はありそうです。
果たして、今後の日本におけるテレワークの浸透は、どうなってゆくのでしょうか。個人的には勿論、テレワーク大賛成派ですので、またテレワーク普及以前の「いつか来た道」に戻るのは避けたいですね。皆様はいかがでしょうか。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。