第85回 ~辞書いらず~ フランスの3度目の外出禁止令 / Le Figaro記事でフランス語上達

第85回 フランスの3度目の外出禁止令 / Le Figaro記事でフランス語上達

 皆様こんにちは、本日も当ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 本日は、変異ウイルスの感染拡大により3度目の外出禁止(対象県はAlpes-Maritimes県を含む主に首都圏中心の16県。2021/3/20日本時間8時から4週間)が発令された、フランス同国内での動きに関するLe Figaro記事をお届けします。

 外出禁止(confinement:直訳では閉じ込めること、閉じこもること、密閉、隔離)を受け、日中に「証明書」(attestation)を警察へ提示する義務が内務省より発表されました。これが「複雑で分かり辛い」「官僚的だ」という批判を受け、撤回されています。

 一方で、(興味本位の週刊誌のように)一方的な批判をするだけでなく、今回は撤回されたattestation(15の外出理由や、1km~30km圏内という制限)が、前回の外出禁止令よりも広範に「自由」を認めていたとの注記もされています。

 日本では「外出禁止」は無いので単純比較はできませんが、「手探り」で対応に苦慮している姿は同じ、という印象を持ちました。事は「生命」と「経済活動」に関わるわけですから、無理もないと思います。それでは、お楽しみください。

<引用はじめ>
Confinement : la nouvelle attestation, un «chef-d’œuvre» bureaucratique aussitôt abandonné

◎外出禁止令:新たな証明書 <<官僚主義の傑作>>たる証明書 ただちに撤回

(訳注)
・attestation(,証明書、(文学的表現で)証拠、確認、言語の使用例)
・«chef-d’œuvre»(傑作:皮肉を込めた表現)
・bureaucratique(官僚的な、官僚政治体制の)
・aussitôt(すぐさま、直ちに)

Face aux critiques, le gouvernement a finalement décidé de supprimer l’attestation en journée. Le ministère de l’Intérieur avait admis un peu plus tôt qu’elle était «complexe» à comprendre.

◎批判を受け、政府はついに「日中の」証明書提示義務を撤回した。その少し前、内務省は、この「証明書」は複雑で理解しづらい、と認めていた。

(訳注)
・Face aux ~:à~に直面して
・critiques:(批判)
・supprimer:取り除く、削除する、取り消す、(制度などを)廃止する
・en journée(日中).
・elle était «complexe» :elleは女性名詞のattestationを指す。

Le mode d’emploi de ce troisième confinement et de son attestation flambant neuve est fort «complexe» à comprendre.

◎この3度目の外出禁止と、「斬新で」猛烈な批判を浴びた証明書の使用法は、非常に複雑で理解するのが難しい。

(訳注)
・mode d’emploi:(使用法)
・flambant(燃え上がる、(古い表現で)見事な←いずれも炎上=強烈な批判、または皮肉)
・neuve:neufの女性形。女性名詞のattestationを修飾。「新しい」という通常の意味の他に、「目新しい」「斬新な」「これまでにない」の意味があります。冒頭の、皮肉を込めた«chef-d’œuvre»(傑作)という表現と同様に、皮肉・批判を込めた意味で解釈するのが自然と思います。

Et cet aveu émane du gouvernement lui-même. «Je vous l’accorde, l’attestation est complexe donc je vais essayer de vous expliquer cela le plus simplement possible», a déclaré la porte-parole du ministère de l’Intérieur, Camille Chaize, invitée sur le plateau de BFMTV.

◎そして、政府自体から次のようなコメントが発せられている。<<今回の証明書が複雑であることを認めます。よって国民の皆様に対し、出来る限り簡潔にご説明させていただきます。>> と、内務省報道官のCamille ChaizeはBFMTVのスタジオで表明した。

(訳注)
・aveu:告白、白状、(複数形で)自白・自供
・émaner de :(公的機関などから)発する、(光・魅力などが)発散する・漂い出る。
・porte-parole:スポークスマン、代弁者
・plateau:テレビや映画のスタジオセット、舞台。高原、盆、(てんびんの)はかり皿

Une complexité qui a déclenché de nombreuses railleries samedi matin. Si bien que, face à la polémique, le gouvernement a finalement décidé en urgence que l’attestation ne serait finalement pas nécessaire en journée, a appris Le Figaro.

◎この複雑な証明書は、2021/3/20朝から非常に多くの嘲笑を浴び始めた。その結果、余りに多くの批判や論争にさらされたため、政府は急遽「日中であれば、証明書の提示は不要とされるであろう」と最終的に決定した。(以上、フィガロ取材による)

(訳注)
・complexité :複雑さ
・déclenché<déclencher:始動させる、惹き起こす、(~の)引き金になる。
・de nombreuses :多くの
・railleries:冷やかし、からかい、あざけり
・Si bien que+直説法:その結果、そのせいで
・face à~ :~に直面して
・polémique:論争、論戦
・ne serait pas nécessaire:「必要とならないであろう」。seraitは「語調緩和」の条件法現在形。政府(内務省)として慎重な検討をしていることが伝わります。
・a appris Le Figaro:「Le Figaro a appris」の倒置形。appris<apprendre「学ぶ、習う、覚える、ニュースなどを知る」の過去分詞。

Paradoxalement, avec ses 15 motifs de sortie, avec des limites de déplacement qui oscillant entre 1 et 30 kilomètres, ladite attestation semblait laisser infiniment plus de libertés que lors des confinements précédents… Mais la complexité peut parfois confiner à l’absurde.

◎逆説的であるが、今回の証明書(15の外出理由や、1Km~30km内の移動制限)は、前回の外出禁止令の時よりも限りなく広範な「自由」の余地を残しているように思われる。しかしながら、複雑さは時折、不条理と隣り合わせのこともある。
(訳注)
・paradoxalement:理屈に合わないことに、逆説的に、かえって
・motifs:理由、動機、模様
・sortie:外出
・déplacement :移動
・oscillant<osciller:(振り子などが)揺れる、振動する。(2つの間を)揺れ動く、迷う
・ladite:leditの女性形。(主に法律用語で)前述の、当該の
・semblait<sembler:~のように思われる
・ laisser:~のままにしておく
・infiniment:無限に、限りなく、非常に
・ plus de libertés que lors des~:~の時よりも多くの自由。(plus A que B:Bより多くのA)
・ précédents:すぐ前の、その前の、以前の
・ confiner à~:~に隣接する、近い
・l’absurde:不条理、(論理学で)背理

<引用おわり>

 いかがでしたでしょうか。当局側による規制、規制に対する批判、批判を受けた当局側の撤回など、フランス国内での慌ただしい動きが手に取るように伝わってきます。

 官僚の権限の強さがしばしば批判されるフランスですが、政府・官僚としても、基本的には国民のためを思って政策を立案しているわけですので、一方的な官僚批判は当たらないと思います。ただし、複雑で分かりづらいのはいけませんね。

 この点は、きちんと記事の最後の部分で「前回の外出禁止令の時よりも限りなく広範な”自由”の余地を残しているように思われる。でも、複雑さは不条理と隣り合わせ」という形で、客観的な評価がなされています。

 本日もお読みいただき、ありがとうございました。

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