第82回 ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert) 「鳥刺しの歌」(Chanson de l’Oiseleur)
皆様こんにちは、本日も当ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
本日はジャック・プレヴェールの「鳥刺しの歌」をお送りします。かわいらしい少女を真っ赤な鳥に例えた詩です。そのせいもあり、今までご紹介してきた他のプレヴェールの詩のような「ドラマ」はなく、よって彼の詩に特有の「余韻」は少ないように感じます。
「歌」(Chanson)と題されていますので、L’oiseau qui vole si doucementの詩行と、L’oiseau rouge et tiède comme le sangの詩行が繰り返されています。それでは、お楽しみください。
<引用はじめ>
CHANSON DE L’OISELEUR
◎鳥刺しの歌
(訳注)
・Oiseleur:野鳥捕獲業者、鳥刺し
1)L’oiseau qui vole si doucement
◎ゆっくりと舞う鳥
(訳注)
・voler: ①飛ぶ、飛行する、飛び交う、舞う ②盗む、不当に払わせる、ぼる
・doucement:静かに、そっと、やさしく、ゆっくりと、徐々に、(話)陰で・ひそかに
2)L’oiseau rouge et tiède comme le sang
◎まるで血のように生あたたかく、真っ赤な鳥
(訳注)
・tiède:なまあたたかい、なまぬるい、熱意のない、煮え切らない
・sang:血。comme le sang「まるで血のように」
3)L’oiseau si tendre l’oiseau moqueur
◎優しく、冷やかし好きな鳥
(訳注)
・tendre:(肉が)やわらかい、(色が)ソフトな、優しい、愛情のこもった、(年齢が)若い、年若い
・moqueur:あざけるような、皮肉っぽい、冷やかし好きの、ばかにするのが好きな。
(文学的表現で)冷やかし好き、愚弄家
4)L’oiseau qui soudain prend peur
◎突然、恐れおののく鳥
(訳注)
・soudain:急に、突然(形容詞でもあり、副詞でもある。ここでは副詞。)
・prend peur:prendre「手に取る」「~の感情を抱く」
5)L’oiseau qui soudain se cogne
◎急にけんかをする鳥
(訳注)
・se cogner:à~、contre~にぶつかる、(体の一部を)ぶつける、(話)殴り合う
6)L’oiseau qui voudrait s’enfuir
◎逃げようとする鳥
(訳注)
・s’enfuir:逃げる、(文学的表現で)時などが過ぎる。
7)L’oiseau seul et affolé
◎ひとりぼっちで、取り乱している鳥
(訳注)
・affolé:(気も狂わんばかりに)取り乱した、恐慌をきたした、(磁針が)狂った
8)L’oiseau qui voudrait vivre
◎生きようとする鳥
9)L’oiseau qui voudrait chanter
◎歌おうとする鳥
10)L’oiseau qui voudrait crier
◎叫ぼうとする鳥
(訳注)
・crier:叫ぶ、泣きわめく、大声を出す、crier après(contre)~「~を怒鳴りつける」
11)L’oiseau rouge et tiède comme le sang
◎まるで血のように生あたたかく、真っ赤な鳥
(訳注)
12)L’oiseau qui vole si doucement
◎ゆっくりと舞う鳥
13)C’est ton cœur jolie enfant
◎それは、かわいい君の気持ちそのものだ。
(訳注)
・cœur:心臓、胸、心、気持ち、(文学的表現で)愛情、熱意、やる気、(トランプの)ハート、中心
14)Ton cœur qui bat de l’aile si tristement
◎上手くいかずに、悲しんでいる君の気持ちそのもの。
(訳注)
・bat<battre:①(他動詞)人を殴る、たたく、打ちまかす、かき混ぜる、②(自動詞)鳴る、音を立てる、鼓動する、脈打つ。
・aile:翼、羽、飛翔 battre de l’aile「片方の翼でしか飛べない」「危機に陥っている」「不振である」
15)Contre ton sein si dur si blanc.
◎真っ白で、固い君の胸の内に脈打つ心。
(訳注)
・sein :乳房、胸、懐、(文学的表現で)母胎・胎内
・dur:固い、つらい、厳しい
<引用おわり>
いかがでしたでしょうか。冒頭でご紹介の通り、「ドラマ」は無いですが、公園で遊びまわる少女を描いた絵のように読むこともできると思います。最後に全文をご紹介します。本日もお読みいただき、ありがとうございました。
L’oiseau qui vole si doucement
L’oiseau rouge et tiède comme le sang
L’oiseau si tendre l’oiseau moqueur
L’oiseau qui soudain prend peur
L’oiseau qui soudain se cogne
L’oiseau qui voudrait s’enfuir
L’oiseau seul et affolé
L’oiseau qui voudrait vivre
L’oiseau qui voudrait chanter
L’oiseau qui voudrait crier
L’oiseau rouge et tiède comme le sang
L’oiseau qui vole si doucement
C’est ton cœur jolie enfant
Ton cœur qui bat de l’aile si tristement
Contre ton sein si dur si blanc.