第47回 テーマ別(5)ラ・ロシュフコー箴言集より
皆様こんにちは、ぱすてーるです。本日もお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は第44回の「テーマ別」(4)の続きで、「La flatterie」(お世辞)に関する4つの箴言をお届けします。箴言番号は148、149、151、152です。各番号に対応した小見出しをつけています。
なお、「テーマ別」分類をされたJean-Marie André氏(第27回ブログご参照)による解説文が付されていましたので、最初にそちらを紹介します。
1)お世辞は偽の貨幣:
・La flatterie: La flatterie est une fausse monnaie qui n’a de cours que par notre vanité
◎お世辞は偽の貨幣であり、「虚栄」によってのみ相場が成立する(流通する)ものである。
(訳注)
・La flatterie:へつらい、お世辞
・fausse < faux:間違った、偽の、本物でない、根拠のない
・cours:相場、市場価格、流通、普及、講義
・vanité:虚栄
2)以下が今回ご紹介する4つの箴言です。
(148)称賛と非難:
・Il y a des reproches qui louent et des louanges qui médisent.
◎ほめる形の非難があり、批判する形の称賛がある。
(訳注)
・reproche:非難、批判
・louent<louer:称賛する、ほめる、神をたたえる、借りる、予約する
・louanges:賛辞、称賛
・ médisent<médire:悪口を言う (←活用はdire「言う」と同じ)
➡「ほめる形の非難」という点では、現代においても「ほめ殺し」という表現もありますね。一方、「批判する形の称賛」というのは、どのようなケースを想定していたのでしょうか。
(149)称賛の拒否:
・Le refus des louanges est un désir loué deux fois.
◎称賛の拒絶は、二度ほめられたい欲望の表れである。
・refus:拒否、拒絶
・loué<louer:(148)の訳注参照。
➡そういう場合もあるのかもしれません。一方で、本当に称賛を拒否したいと考える人もいると思います。「ノーベル文学賞」を辞退したジャン=ポール・サルトル(1964年文学賞)、ボリス・パステルナーク(1958年文学賞)、エリザベス女王の勲章を拒否したビートルズなど。他の箴言もそうですが、「文脈」が無いと解釈の幅が出てきてしまいますね。
(151)他人を支配すること、自分が支配されないようにすること:
・Il est plus difficile de s’empêcher d’être gouverné que de gouverner les autres.
◎他者を支配するよりも難しいのが、自分が(他者に)支配されないようにすることである。
(訳注)
・plus difficile ~ que de gouverner < plus A que B :BよりもAである
・s’empêcher de ~: ~するのを我慢する、こらえる (ne (pas) pouvoir s’empêcher de ~:~せずにはいられない)
・être gouverné :支配される
➡人は他者に支配されがちである、ということを言いたいのでしょうか。「支配」の意味する内容次第で解釈は変わると思います。当時の事情を考慮すれば、強大な軍隊で他者・他国を「支配する」という意味なのか、それとも、社交界において他人の考え方や流行に「支配される」なのか。箴言(151)と同様に、解釈に幅が出てきます。
(152)自分へのお世辞(自慢)、他者からのお世辞:
・Si nous ne nous flattions point nous-mêmes, la flatterie des autres ne nous pourrait nuire.
◎もし我々自身が自画自賛することが無いとしたら、他人のお世辞が我々を傷つけることはあり得ないだろう。
・nous flattions<se flatter de~: ~を自慢する、~できると公言する、自画自賛する、思い上がる。flattionsはflatterの半過去形。続くpourrait(条件法現在形)とセットで(Si~半過去, 条件法現在・・・)「現在の事実に反する仮定」を表す。「現在の事実」とは、「我々は思い上がることがあるので、他人のお世辞によって害されてしまうことがある」ということ。
・nous-mêmes:我々自身
・nuire:傷つける、損なう、妨げる→se nuire(代名動詞)「自分を傷つける、互いに傷つけ合う」
➡他人のお世辞によって舞い上がることや、思い上がることを戒めているのだと思います。箴言148で付させていただいたコメント「ほめ殺し」なども、「他人のお世辞によって思い上がり、結果として痛い目にあう」ということを表す表現だと思います。地位の高い人であったからこそ、周囲からのお世辞に対して自らを戒めていたのでしょう。
本日は以上となります。本日もお読みいただき、ありがとうございました。