第87回 ジャック・プレヴェール 「失われた時間」

第87回 ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert) 「失われた時間」(Le temps perdu)

 皆様こんにちは、本日も当ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

本日はジャック・プレヴェールの「失われた時間」をお送りします。わたしたちの日々の「仕事」の一コマに思いを馳せたくなる詩です。プレヴェールの詩らしい、「余韻」を味わわせてくれます。それでは、お楽しみください。

<引用はじめ>
Le temps perdu

◎失われた時間

1)Devant la porte de l’usine

◎工場の門の前に

(訳注)
・usine:工場、工業

2)le travailleur soudain s’arrête

◎一人の労働者が急に立ち止まる

(訳注)
・soudain:突然、急に、不意に
・s’arrêter:止まる

3)le beau temps l’a tiré par la veste

◎良い天気が彼の上着を引っ張ったのだ

(訳注)
・tiré <tirer:引く、引っ張る、引き寄せる、(de~)引き出す・取り出す
・veste:上着、ジャケット

4)et comme il se retourne

◎そして彼が振り返ると、

(訳注)
・comme:①~の様に ②~として ③~なので ④~したときに ⑤(感嘆文)なんと~だろう
・se retourner:後ろを振り返る、s’en retourner「戻る、帰る」、寝返りを打つ、向きを変える、ひっくり返る、裏返しになる。

5)et regarde le soleil

◎太陽を眺める

(訳注)
・「et」を忠実に訳すなら、「彼が太陽を振り返ると、太陽も彼を見つめる」と訳しても良いと思います。その場合は、正確にはet le soleil le regardeとなりますが。

6)tout rouge tout rond

◎真っ赤で見事にまん丸な

(訳注)
・rond:丸い、丸々とした、端数の無い、(人が)率直な・策を弄しない、(話)酔っ払った

7)souriant dans son ciel de plomb

◎鉛色の重苦しい空の中で微笑んでいる太陽を

(訳注)
・souriant:sourire「微笑する」の現在分詞形「微笑みながら」
・plomb:鉛、(電気の)ヒューズ、(猟銃の)散弾、(釣り用などの)おもり。ciel de plomb「鉛色の重苦しい空」

8)il cligne de l’œil

◎そして彼は太陽にウインクするのだ

(訳注)
・cligner:ウインクする(cligner de l’œil)、目を細める(cligner des yeux)

・ œil:目、視線、注目、見方

9)familièrement

◎打ち解けた感じで

(訳注)
・familièrement:くだけた言い回しで、俗に、親しく、打ち解けて、なれなれしく

10)Dis donc camarade Soleil

◎「なあ、太陽さん」

(訳注)
・camarade:仲間、友達、同級生、(左翼政党・組合の)同志

11)tu ne trouves pas

◎「ばかげていると思わないかい?」

(訳注)
・trouves<trouver:①見つける、見つけ出す、拾う ②会う、出くわす ③(~を)思いつく、(~だと)気づく ④(~だと)思う ⑤~を認める、見出す。

12)que c’est plutôt con

◎「こんな素晴らしい」

(訳注)
・con:(卑)女性器 (会話で)ばか者、まぬけ(ばかな/くだらない/困った)

13)de donner une journée pareille

◎「好天の一日を」

(訳注)
・ pareille:①同じ、似たような ②このような、こんな、そんな (例:Sortir à une heure pareille!「こんな時間に出かけるなんて!」

14)à un patron?

◎「雇い主にささげるなんて」

(訳注)
・patron:①経営者、オーナー、雇用主 ②守護聖人、守り神 ③指導教授、先生、(特に)医学部教授(女性にも男性形を用いる)

<引用おわり>

いかがでしたでしょうか。

 ニコニコ(souriant)まん丸な太陽を同志(camarade)と呼び、patronと対比されています。詩のタイトルは辛辣ですね。「労働時間」は「失われた時間」として、全く評価されていません。読後の余韻に浸りつつ、考えさせられる内容だと思います。

 以下、全文をまとめて掲載させていただきます。本日もお読みいただき、ありがとうございました。

Le temps perdu

Devant la porte de l’usine
le travailleur soudain s’arrête
le beau temps l’a tiré par la veste
et comme il se retourne
et regarde le soleil
tout rouge tout rond
souriant dans son ciel de plomb
il cligne de l’oeil
familièrement
Dis donc camarade Soleil
tu ne trouves pas
que c’est plutot con
de donner une journée pareille
à un patron?

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