第51回 テーマ別(6)ラ・ロシュフコー箴言集より
皆様こんにちは、本日もお読みいただき、ありがとうございます。
本日は第47回ブログに続き、ラ・ロシュフコーによる「テーマ別」箴言をお届けします。シンプルなフランス語文により、フランス語力と生きる知恵の二つを同時に学べます!
今回のテーマは「気分」(humeur)、箴言番号は45、49、252、290の4つです。いつも通り、テーマ分類をされたJean-Marie André氏によるテーマ見出しを最初に紹介します。
L’humeur : notre humeur met le prix à tout ce qui nous vient de la fortune.
◎気分:我々の気分は、運命が我々にもたらすあらゆるものに値段をつけようとする。
(訳注)
・humeur:機嫌、気分、気質、性格、(文学的表現で形容詞なしで)不機嫌
・mettre le prix à~:~に値段をつける (現代ではmettre~à prixで「~に値をつける」)
・tout ce qui nous vient de~:~から我々にやって来るすべてのもの。
・fortune:財産、富、運、運命
(45)「気分」と「きまぐれ」:
– Le caprice de notre humeur est encore plus bizarre que celui de la fortune.
◎我々の気分がきまぐれであるのは、運命がきまぐれであるよりももっと不可思議である。
(訳注)
・caprice:きまぐれ
・bizarre:奇妙な、変な、おかしい
➡「人は感情の動物である」という訳ですね。確かに、そういう面もあります。
(49)幸福と不幸:
– On n’est jamais si heureux ni si malheureux qu’on s’imagine.
◎人は決して、自分がそう思うほど幸福でもなければ、不幸であるわけでもない。
(訳注)
・ ne ~ si A que B: BほどAはない。(例:Il n’est pas aussi aimable que sa femme「彼は奥さんほど愛想が良くない」)
・s’imaginer:~の自分を思い描く、想像する、思い込む。
➡これは、現代でも良く言われることですね。ラ・ロシュフコーから言われるとあらためて納得してしまいます。
(252)好みを変えること:
– Il est aussi ordinaire de voir changer les goûts qu’il est extraordinaire de voir changer les inclinaisons.
◎人の癖を変えるのが普通ではないことは、好みが変わるのが普通であるのと同様である。
➡何だか目が回りそうな翻訳で申し訳ありません。「aussi~que」を無理やり訳そうとしたためです。
私はinclinaisonを「癖」と訳しましたが、二宮フサ氏は「性分」(しょうぶん)として次のように訳されています。
「人の趣味が変わるのを見ることはごく普通なのにひきかえ、人の性分が変わるのを見ることはごく異例である。」
さすが、二宮氏の訳のほうがすっきりしますね。
(訳注)
・aussi ~que・・・:・・・と同じぐらい~である。
・extraordinaire:驚くべき、異常な、並外れた、極度の、素晴らしい、臨時の
・inclinaisons:傾斜、傾き、勾配、体を傾けること、傾斜
(290)見せかけの忠実さ:
– La loyauté affectée est une imposture délicate.
◎見せかけの忠実さは、繊細なぺてんである。
(訳注)
・loyauté:誠実、忠実、正直
・affecté:①不自然な、わざとらしい、見せかけの ②悲しんだ、(病などに)冒された
・imposture:(文)欺瞞、ぺてん
・délicate:虚弱な、過敏な、傷つきやすい、細やかな、思いやりがある、微妙な、難しい
➡「面従腹背」ですね。「ぺてん」と言われると正直、100%そうとも言い切れない場面もあると思います。「主君」や「上司」が人格者である場合は、確かに「ぺてん」となる可能性が高いです。でも逆に、「主君」や「上司」がとんでもない人物であれば、「必要悪」「処世術」として「見せかけの忠実さ」が必要になりますね!
本日もお読みいただき、ありがとうございました。