第90回 “辞書いらず”フランス語 /「テーマ別」ラ・ロシュフコー箴言集 ・「器用さ」
皆様こんにちは、今回も当ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回はラ・ロシュフコー「テーマ別」箴言シリーズ続きとして、「器用さ」(habileté)をテーマとした箴言の残りを紹介します。箴言番号は244、248、253です。いつものように、各「テーマ」の初回は、分類者であるJean-Marie André氏による「巻頭言」からご紹介します。
今回も、簡潔なフランス語の文章を通じて「生きる知恵」を学ぶことができます。フランス語文左側の( )内の数字が箴言番号、◎が和訳です。それでは、お楽しみください。
<引用はじめ>
L’habileté : c’est une grande habileté que de savoir cacher son habileté
◎器用さ:自らの器用さを隠す術を知っていること自体が、一つの大きな器用さである。
(訳注)
・habileté:器用さ、巧みさ、(多く複数で)仕事などの要領・こつ。
・savoir:知る、savoir +不定詞で「~できる」
・cacher:隠す
(244) La souveraine habileté consiste à bien connaître le prix des choses.
◎至高の器用さとは、物事の価値を良く知っているということである。
(訳注)
・souverain(e):(文学的表現で)至上の、至高の、主権を持つ、最終審の、極度の、徹底した、(薬が)特効性の
・consiste à :~することに存する
・connaître :知る
・le prix :価値、価格
➡確かにその通りですね。冒頭の「自らの器用さを隠す術を知っていること」自体も、「物事の価値を知っているということ」の一つだと思います。
(248) La magnanimité méprise tout pour avoir tout.
◎寛容さは、全てを得ようとして全てを無視する。
(訳注)
・magnanimité: (文学的表現で)寛容
・mépriser:①軽蔑する ②無視する
➡この箴言は、文脈が無いので本当に分かり辛いですね。少なくとも、mépriserを①の「軽蔑する」と解釈すると全く訳が分からなくなります。②の「無視する」で解釈すると、少しは分かりそうな気がします。
つまり、「寛容でない」場合は、身の回りに起こる全てに「反応する」のに対して、「寛容である」場合には、逆に「反応しない」という訳ですね。「直ぐに反応せず静観する」という姿勢が、「無視する」という表現につながっていると考えれば良いのではないでしょうか。
(253) L’intérêt met en œuvre toutes sortes de vertus et de vices.
◎私利私欲によって、人はあらゆる種類の美徳と悪徳を活用しようとする。
(訳注)
・intérêt:①興味、関心 ②面白さ、重要性 ③好意 ④利益、得 ⑤(複数形で、物質的な)利害、出資金 ⑥私利私欲 ⑦利息、利子
・met en œuvre<mettre ~ en œuvre:~を用いる、~を実行する、~を駆使する
・vertus:美徳
・vices: 悪徳、悪習、悪癖 欠陥、不備
➡この箴言は、少し分かりにくいですが、「私利私欲に基づき世渡りが上手い人」などを想像いただければ、分かり易くなるような気がします。
<引用おわり>
本日もお読みいただき、ありがとうございました。