第53回 ナポレオンのラブレター / ジョゼフィーヌ(1)

第53回 ナポレオンのラブレター / ジョゼフィーヌ(1)

 皆様こんにちは、今回もお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 今回は、趣向を変えて、ナポレオンが妻となるジョゼフィーヌへ宛てたラブレターを紹介します。フランスのウェブサイトで紹介されていたのですが、あいにく手紙が書かれた日付の記載がありませんでした。

 それでも、端から見ていて、ちょっと恥ずかしいと思うくらいの表現が盛りだくさんで楽しめます!いざ、本気でラブレターをフランス語で書く場合の練習にもなりますよ(笑)!

Lettre d’amour de Napoléon à Joséphine

◎ナポレオンからジョゼフィーヌへの恋文

Je me réveille plein de toi.

◎君いっぱいに満たされて目覚めました。

(訳注)

・plein de~:~でいっぱいの

Ton portrait et le souvenir de l’enivrante soirée d’hier n’ont point laissé de repos à mes sens.

◎君の肖像画や、昨晩の陶酔の思い出をもってしても、私の官能は少しも休まらないのです。

(訳注)

・enivrante:陶然とさせるような、酔わせるような。cf.ボードレールの散文詩集「Le Spleen de Paris」の中に、”Enivrez-vous”(酔え)という素晴らしい詩があります。このEnivrer(酔わせる)から来ている形容詞です。

・sens:感覚、良識、<文学的表現・複数形で>官能、肉欲

Douce et incomparable Joséphine, quel effet(結果、効果、印象) bizarre faites-vous sur mon coeur !

◎甘美にして、類まれなジョゼフィーヌ!あなたは何と奇妙な効果を、私の上にもたらしてくれることでしょう!

(訳注)

・douce<doux:<文>快い、心なごむ、甘美な

・incomparable:比類のない、比較できない

Vous fâchez-vous?

◎あなたはご気分を害されましたか?

(訳注)

・se fâcher:怒る

・なお、本レターの中では、TuとVousが併用されており、Tu=「君」、Vous=「あなた」

 と訳しています。

Vous vois-je triste ? Êtes-vous inquiète ?

◎あなたは悲しそうにしているのでしょうか。気がかりがありますか? 

(訳注)

・vois-je < voir:見る、見える、<想像で>見える、目に浮かぶ。

Mon âme est brisée de douleur, et il n’est point de repos pour votre ami…

◎私の魂は、苦しみで壊れそうです。あなたの友である私にとって、少しも安らぐひと時が無いのです。

(訳注)

・âme:魂 (女性名詞 → 直後のil n’est point de reposのilには対応していない。)

・brisée de:~で壊れた、破れた、くたくたになった、くじけた

・douleur:苦悩、苦しみ、悲しみ

・n’est point de repos:「il」を指す男性名詞は直前に無いので、文学的表現で「存在する、ある、生きている。」例:デカルトJe pense, donc je suis.「我思う、ゆえに我あり」Il n’est plus.「彼はもう亡くなった」 raison d’être「存在理由」。il n’y a pointとも考えられる。

Mais en est-il donc davantage pour moi, lorsque, me livrant au sentiment profond qui me maîtrise, je puise sur vos lèvres, sur votre coeur, une flamme qui me brûle.

◎けれども、私を支配する奥深い感情に身をゆだねていると、更に私は、私を焦がす炎をあなたの唇と心から引き出すのです。

(訳注)

・en est-il donc davantage:Il en est ~<文学的表現で>事情は~である。

・davantage:より一層、それ以上に

・me livrant au<se livrer à~:<感情などに>身をゆだねる。<仕事・遊びなどに>打ち込む、従事する。投降する、心の内を明かす。

・puiser:汲む、取り出す、引き出す

・lèvres:唇

・flamme:炎、火事、輝き、熱意、<古・文学>恋の炎)

・ brûler:焼く、燃やす、焦がす、<欲望などが>身を焦がす。

Ah ! C’est cette nuit que je me suis bien aperçu que votre portrait n’est pas vous ! Tu pars à midi, je te verrai dans 3 heures.

◎ああ、私はその晩に気づいたのです、あなたの肖像画があなた自身ではないということに。君は午後出発するので、3時間後に会えますね。

(訳注)

・je me suis bien aperçu<s’apercevoir de~:~に気づく、互いに気づく、目に留まる

・portrait:肖像画、描写、生き写しの人

En attendant, mio dolce amor, reçois un millier de baisers ; mais ne m’en donne pas, car il brûle mon sang.

                                        Napoléon

◎わたしの沢山の接吻を受け取ってほしいと期待しています。でもやはり、それ(接吻)を私に与えないで下さい。なぜなら、それが私の血を焦がしてしまうから。ナポレオンより。

(訳注)

・mio dolce amor:私の愛しい人よ(my sweet love)

・reçois:recevoir「受け取る」の命令法現在形

・millier:千人ほどの→沢山の

・baisers:接吻

・il:un millier de baiserを指す 

 いかがでしたでしょうか。19世紀初めのヨーロッパ全土に名をとどろかせた英雄であっても、意中の女性を前にすると、他の多くの男性と余り変わらないんですねー(笑)。

 以上が本日のラブレターです。後ほど、ナポレオンの別のラブレターや、他の有名な方のラブレターも紹介しますので、楽しみにしていてください!

 今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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