皆様こんにちは、今回も当ブログへお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、ショパンと親交のあった女流作家「ジョルジュ・サンド」から彼に宛てられた手紙をご紹介します。簡潔で、昨日書かれた手紙として読んでも違和感を感じさせません。フランス語の基本的な文法学習に最適の手紙です。手紙の紹介後、この手紙が掲載されていたサイトをご紹介します。実は、意外な種明かしがありますので、ぜひ最後までご覧ください。
<引用はじめ>
Cher ami,
Je suis heureuse de vous dire que j’ai bien compris, l’autre jour, que vous aviez toujours une envie folle de me faire danser.
◎拝啓
先日、あなたが私を躍らせたいという強い希望を相変わらず抱いていることを知り、嬉しかったです。
(訳注)
・J’ai bien compris que vous aviez toujours une envie ~:英文法にもある「時制の一致」。過去(J’ai bien compris:複合過去)における現在を表す。直接話法の表現を間接話法に変える場合などに用いられる。例):Elle a dit : « Je dois donner ce livre à mon frère. »(直接話法) → Elle a dit qu’elle devait donner ce livre à son frère.(間接話法)
・l’autre jour:先日
・toujours:いつも、絶えず、常に、相変わらず。
・envie:欲求、願望、羨望、ねたみ
・folle:fouの女性形。気の狂った、気違いじみた、(程度の)大変な、調子の狂った。
・ me faire danser:faireは使役動詞「~させる」
Je conserve le souvenir de votre baiser et j’aimerais beaucoup que ce soit une preuve que je suis aimée et désirée par vous.
◎私はあなたの接吻の思い出を大切に保持しています。そして、それが、私があなたに愛され、求められていることの証明であることを強く望んでいます。
(訳注)
・conserve :
・j’aimerais beaucoup que ce soit :話し手の願望を表す。
・preuve:証拠、あかし
Je suis prête à vous montrer mon affection toute désintéressée et sans calcul, et si vous voulez vraiment me voir vous dévoiler sans aucun artifice mon âme toute nue, daignez au moins venir chez moi:nous bavarderons franchement entre amis.
◎私はあなたに対して、まったくもって無私で打算の無い愛情を示す用意があります。そして、もしあなたが本当に、一切の策略なしに私の「あるがままの魂」のベールをお取りになりたいのでしたら、少なくとも私の家においで下さい。お友達と一緒に、率直に語り合いましょう。
(訳注)
・affection:愛着、愛情、疾患、病気
・désintéressée: 私利私欲の無い、公平無私な
・sans calcul:利害なしに (calcul:計算、勘定、予測、もくろみ、打算)
・dévoiler:覆いを取る、(隠されていたものを)あらわにする・明るみに出す。se dévoiler「明るみに出る」「現れる」「暴かれる「自分のベールを取る」
・artifice :(文学的表現で)方策、策略、たくらみ、技巧
・nu(e):裸の、むき出しの、飾りのない、あるがままの。
・daignez:daigner+不定詞: (主に2、3人称に用いて)~してやる、してあげる。
・bavarderons:bavarder(おしゃべりする、むだ話をする、秘密をもらす、悪口を言う)の単純未来形。
・franchement:率直に、率直に言えば、(形容詞・副詞の前で)全く、実に、しっかりと、きっぱりと。
Je vous prouverai que (je) suis la femme capable de vous apporter l’affection la plus étroite et aussi la plus profonde, l’épouse la plus fidèle, la plus sûre que vous puissiez imaginer!
◎私は自分が、最も親密で深い愛情をあなたに届けることができることや、あなたが想像し得る限り最も忠実な伴侶であることを証明してみせます。
(訳注)
・capable de~:~できる
・étroite :狭い、窮屈な、(考えなどが)狭い、(関係などが)親密な、緊密な
・épouse :époux(配偶者)の女性形。妻。
・fidèle:忠実な、誠実な、貞節な、態度を変えない、正確な
・puissiez :pouvoirの接続法現在形。先行詞が最上級の場合(またはそれに準じる場合)、接続法が用いられる。
Oh comme votre amour me sera doux, car la solitude qui m’habite est longue, dure et sûrement bien pénible, et mon âme est follement ébranlée, venez bien vite et vous pourrez me la faire oublier. Et à vous, je veux me soumettre entièrement.
◎ああ、なんとあなたの愛は私にとって甘美であることでしょう。なぜなら、私に長く取りついている孤独は長く続いており、厳しく、そして間違いなくつらいものであるからです。そして、私の魂は、気が狂ったように揺り動かされています。早く、いらしてください。そして、私に孤独を忘れさせてください。
あなたへ完全に忠実な、ジョルジュ・サンドより。
(訳注)
・comme :なんと、どれほど
・habite<habiter:①住む(自動詞:~à Paris) ②~に住む(他動詞:~Paris) (文学的表現で)感情などが宿る、取りつく。
・sûrement :きっと、おそらく、もちろん、確実に、間違いなく
・pénible:骨の折れる、苦しい、つらい、悲しい、(精神的に)つらい、痛ましい、(人の話が)不愉快な
・follement:途方もなく、ものすごく、気が狂ったように、熱烈に
・ébranlée<ébranler:揺るがす、振動させる、(体制・信念などを)揺るがす、ぐらつかせる、気持ちをぐらつかせる。
・me la faire oublier:laはsolitude(孤独)を指す。「私に孤独を忘れさせる」(faireは使役動詞)
・à vous, je veux me soumettre :se soumettre「降伏する」「帰順する」se soumettre à「~に従う。」本文では 「à vous」がse soumettreの前に倒置されている。
・entièrement:完全に、すっかり、全く
<引用おわり>
いかがでしたでしょうか。現代でもそのまま使えそうな、基礎的な文法学習にも最適な、分かり易い文章だったと思います。
さて、冒頭で少し触れた「種明かし」です。この手紙を紹介していたサイト(berlol.net/Chopin.htm)によると、何と、この手紙は19世紀末に、いたずら好きな人が作った贋作だそうです!一本取られてしまいました。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。